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ここから始まる物語

第20章 再会、抱擁、功罪

 ピスティが聴く姿勢を取ると、クリシーはさっそく語り始めました。魔法の力と、魔法使いと、神についての話を・・・・・・。

 ※

 国王陛下に対して、失礼なことを申し上げなくてはならないこともありますが、ご理解いただくためには必要なことです。どうか、お許しください。
 アウィーコート王国は、つい最近まで、決して裕福な国ではありませんでした。市場も病院も井戸も、足りないありさまでした。もっとも、今は昔ほど貧しくはありません。歴代の王の尽力により、少しずつ豊かさを持つようにはなったのです。もちろん、今はレナさまの力も大きく働いております。
 昔は、みな貧しく暮らしていたのです。そして、豊かさを求めていたのです。いや、それは豊かさなどではなく、水や医療や、パンを買うお金といった、生きるために絶対に必要なものだったと言えるかもしれません。
 とにかく人びとは、日々の貧しさから抜け出したいと思いながら暮らしていたのです。
 ところが、そんなある日、アウィーコート王国に神と呼ばれる者が現れました。神ではなく、神と呼ばれる者――です。それについては、聖書にはこう書かれています。
「黒い髪を持った乙女の姿で、どのような願いも叶えることができる」
 そう、今のレナさまと同じ姿なのです。だから私は、レナさまの髪の色が黒いのを見て、もしやと思っていたのです。つまり、その昔に現れた『神と呼ばれる者』も、実は魔法使いだったのです。
 しかし、人びとはそんなことは知りませんから、喜んで自分の好きな願いを叶えていったのです。それでも秩序が保てていたのは、当時の人々が、謙虚さを持っていたからなのでしょう。本当のところはわかりませんが・・・・・・。

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