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ここから始まる物語

第22章 最後の戦い

【それぞれの決意】
~ピスティの場合~

 強欲の夜――。
 魔法の力によって人々が心を失い、街が燃えてしまった事件のことを、人々はいつしかそう呼んでいました。
 それはあまりに悲惨な事件でしたが、その強欲の夜事件を経たおかげで、アウィーコート王国の人びとは、「団結」と「友愛」という得がたい宝を得たのも事実です。
 しかしピスティは、その宝が早くも失われつつあるように思えてなりませんでした。
 というのも、街を歩いている時に、たまにあちこちから言い争いが聞こえてくることがあるのです。
 どんな言い争いかといえば、それはピスティの評判についてでした。
 一方は、ピスティを称える声。
「ピスティさまはお若いのに立派な王だ」
 というもの。そしてもう一方は、
「若いから、この先多くの失敗をしかねない」
 という声でした。
 ほかのことなら、ピスティが出ていって仲裁のひとつもするのですが、自分が争いの種となると、出しゃばる気持ちにはなれません。もっとも、それで大喧嘩になるようなことはないのですが、強欲の夜とは別の、どこか刺々しい雰囲気を、ピスティは感じていました。
 国民は、ピスティとレナの再会と抱擁を祝福してくれましたが、やはりよく思わない者もいた、ということでしょう。もちろんすべての人間から好かれることは無理だということくらいはわかっています。でも、厳しい声をじかに聞くと、さすがにピスティも気分が悪くなります。
 しかしピスティは王です。しょげているわけにはいきません。もしも分断が起きるようなら、ピスティが率先してそれを止めなければならなりません。しかし――。
 ――どうすれば止められるのかな。
 その方法がわからないでいるのでした。

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