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ここから始まる物語

第5章 対決

 狼の爪をかわして飛び退いた時です。
 急に、足許が揺らぎました。
 ハッとして地面を見ると、いつの間にか崖っぷちに立っていました。
 足許が揺らいだのは、着地した地面が崩れたからです。
 このままでは、ピスティは崖から転落してしまいます。
 崖は、下を見ただけで目もくらむような高さです。落ちたら、まず助からないでしょう。
 ピスティはなんとかして地面に這いつくばろうとしたのですが、崩れてしまった体勢を戻すことはできませんでした。
 必死に、地面に生えていた草を掴んだところで、その草もろとも、ピスティは崖から落ちてしまったのです。
 そして――。
 次の王を決める儀式は、フォビスの勝利に終わったのでした。
 その後、ピスティはどうなったのでしょう。

 ※

 崖から落ちたピスティは、生きていました。
 しばらく気を失っていただろうことは、太陽の傾き加減からわかりました。
 それにしても、どうして助かったのでしょう。城よりもまだ高い崖から落ちたというのに・・・・・・。
 不思議に思っているピスティの前に、ひとりの少女が姿をあらわしました。
 白い衣に身を包んだ、水のように澄んだ美少女でした。
 ピスティよりも三歳くらい歳上でしょうか。肩口できられた黒い髪。真っ白い肌。ちょっと目尻の釣りあがった、気の強そうな瞳。唇は、まるで猫のように、真ん中が少し尖っています。
「きみは・・・・・・」
 ピスティが尋ねると、少女は奇妙な返事をしました。
「わかんない!」

 ※

 さて、この少女はいったい何者なのでしょうか。どうしてピスティは助かることができたのでしょうか?

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