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第2章 村に迫る危機

 いつからそこにいたのか、教会の脇に、見慣れない少年の姿がありました。
 歳は、まだ十五歳くらいといったところ。喧嘩をしていた二人から見れば、まだ小童です。でも、石を手に当てられた男は怒りませんでた。太っちょの男も、声もあげません。そればかりか、そこへ集まっていた村人の誰も、少年を見て目を丸くするばかり。
 見とれてしまったのです。少年の美しい姿に。
 長めの金髪を頭の後ろで縛っていて、肌は白く、眉は凛々しく、目は細く優しそうで、口許はきりっと引き締まっています。精悍な顔つきですが、顔の輪郭に丸みが残っています。幼さが、まだ抜けきっていないのです。それに、あまりに肌が白いせいでしょうか。頬から鼻の上にかけて、茶色のそばかすが散らばっているのが見えます。
「あんた、誰だい」
 村人のひとりが、やっとといった様子で少年に尋ねました。
「俺かい。俺はね」
 少年は、白い頬にえくぼを浮かべて名乗りました。

「俺はピスティ。この国の王子さ」

 村人たちは、一瞬考え込んでしまいました。
 ピスティ。
 王子。
 その言葉が、すぐには飲み込めなかったのです。
 でも、すぐに理解して、みんなは喜んだり腰を抜かしたりしたのでした。

 ※

 どうしてピスティが、この村にいたのでしょうか。
 ご存知の通り、ピスティは王子さまだからといって、お城の中で大人しくしているような性分ではありません。川へ泳ぎに行ったり幽霊屋敷へ探検に行ったりと、父や兄や家来たちが心配するようなことばかりをしていました。

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