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第8章 企みの底で

 父・ブロミアの病は、ますます悪くなっていました。
 ベッドに仰向けになっているブロミアの顔を見ると、頬はこけ、目のまわりにはたくさんの目やにがこびりついています息は荒いし、肌は灰色になっています。
 弱っていることは、ひと目でわかります。
 それでも、ピスティへの憎しみは、まるで衰えていないようでした。
「馬鹿者が」
 城へ呼び戻され、父親の寝室へ駆けつけたピスティに、ブロミアが真っ先に放ったひと言が、それでした。
「ピスティ。おまえ、山賊退治をしたそうだな」
 ブロミアが言っているのは、きっとウジミス村でのことでしょう。
「しました。村人たちは、喜んでくれました。助かったと言ってくれました」
 あの時のことを思い出すと、わくわくした気持ちが今でも湧いてきます。その気持ちが、ついつい顔に出てしまっていたようです。
「何を喜んでいるッ!」
 ブロミアは大きな声で怒鳴りつけました。が、体が弱っているブロミアは、激しく咳き込み、その咳は止まらなくなってしまいました。
「父上、ご無理なさいますな」
 ベッドの脇にいた兄のフォビスが、そっとブロミアの手を握ります。それに安心したのか、ブロミアは目を閉じてしまいました。眠ってしまったのでしょうか。
「父上は、見ての通り弱ってしまったよ。これもすべて、おまえのせいだよ。ピスティ」
 フォビスは、ブロミアの手をそっと胸へ置きました。

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