ここから始まる物語
第8章 企みの底で
「みんな、すまない。僕がうっかりした行動をしたせいで、みんなを、この国を・・・・・・」
「大丈夫だと申していましょうに。ほら、ご覧くだされ」
ゲンは立ちあがりざまに、遠くを指で示しました。
ピスティたちがいるのは、城下街です。城下街は、丸ごと頑丈な塀で囲まれています。その塀の向こうに、エカタバガン帝国の国旗がいくつも揺れているのが見えます。赤地にライオンの絵が描かれた旗は、こうして見ると恐ろしく見えます。
国旗の数と、塀の外に舞い上がるもうもうとした砂煙を見ると、かなりの大軍が押し寄せてきていることがわかります。でも、城下街に攻め込んでくる様子はありません。いくら大軍でも、簡単に塀を破ることはできないようです。
城下街は安全なのです。その安全をもとめて来たのでしょう。ぼろぼろの服を来て大きな荷物を背負った人々の姿が、たくさん見えます。城下街から離れた場所に暮らしていた人々でしょう。村が襲われて、やっとのことでここにまで逃げてきたのに違いありません。
「あそこをご覧くだされ」
しかしゲンが指をさしているのは、エカタバガンの国旗でも避難民たちでもありませんでした。
エカタバガン軍が迫っているのとは全く違う方向を、ゲンの指は示しています。
「今年も、樫の木がたくさん茂っていますなあ」
一瞬、頓珍漢なことを言っているようにしか聞こえませんでした。しかし、ゲンには知恵があります。きっと何が意味があってのことでしょう。
「樫が、どうした」
ピスティは訊きました。
「あの樫を、この爺めに、みんないただけないかと思いましてな」
「樫を? それは、別に構わないと思うけど」
「大丈夫だと申していましょうに。ほら、ご覧くだされ」
ゲンは立ちあがりざまに、遠くを指で示しました。
ピスティたちがいるのは、城下街です。城下街は、丸ごと頑丈な塀で囲まれています。その塀の向こうに、エカタバガン帝国の国旗がいくつも揺れているのが見えます。赤地にライオンの絵が描かれた旗は、こうして見ると恐ろしく見えます。
国旗の数と、塀の外に舞い上がるもうもうとした砂煙を見ると、かなりの大軍が押し寄せてきていることがわかります。でも、城下街に攻め込んでくる様子はありません。いくら大軍でも、簡単に塀を破ることはできないようです。
城下街は安全なのです。その安全をもとめて来たのでしょう。ぼろぼろの服を来て大きな荷物を背負った人々の姿が、たくさん見えます。城下街から離れた場所に暮らしていた人々でしょう。村が襲われて、やっとのことでここにまで逃げてきたのに違いありません。
「あそこをご覧くだされ」
しかしゲンが指をさしているのは、エカタバガンの国旗でも避難民たちでもありませんでした。
エカタバガン軍が迫っているのとは全く違う方向を、ゲンの指は示しています。
「今年も、樫の木がたくさん茂っていますなあ」
一瞬、頓珍漢なことを言っているようにしか聞こえませんでした。しかし、ゲンには知恵があります。きっと何が意味があってのことでしょう。
「樫が、どうした」
ピスティは訊きました。
「あの樫を、この爺めに、みんないただけないかと思いましてな」
「樫を? それは、別に構わないと思うけど」