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ここから始まる物語

第8章 企みの底で

 ――くそ、くそ、くそ!
 胸の中に溢れる悔しさを、ピスティは地面を殴ることで散らしていました。すると――。

「ピスティさま!」

 聞き覚えのある声がしました。
 顔をあげると、広場の近くにある鍛冶屋の裏手に、手を振っているライの姿が見えました。もちろん、フウとゲンも一緒です。
 三人の仲間たちは、駆け寄ってくると、口々にピスティを心配しました。
「いかがされましたかな、ピスティさま」
 とゲンが額に皺を寄せます。
「何があっても、俺たちはピスティさまをお助けするだよ!」
 ライが鼻から息を噴きます。
「心配無用」
 フウは、冷たい声で暖かい言葉をかけくれます。
 ピスティの胸に、暖かいものがこみ上げてきました。それは顔を火照らせ、最後には涙となって目からこぼれ出しました。
「どうなされました、ピスティさま。泣かれるなど、よほどのことがあったのでしょうなあ。さあ、この爺に話してみてくだされ」
 ゲンが、ピスティの背中を何度も何度もさすってくれます。
 ピスティは、もう泣くのを我慢できず、大声でしゃくりあげながら、フォビスと話したことをつげました。
 自分たちが退治したと思っていた山賊は、実はエカタバガン帝国の軍だったこと、国境を越えてしまったことには、すでに話がついていたこと、そして、ピスティが、時間稼ぎのためという口実で、戦いの中で死なされてしまうことなどなど・・・・・・。
「そんなことがあっただか! フォビスさまは、なんてひどいお方だ!」
 ライは憤っています。
「冷酷無比」
 フウは、仮面の奥の目を光らせています。
「われわれがいれば、エカタバガン軍など恐るるに足りませぬ。安心めされ」
 ゲンはあくまで穏やかです。

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