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第9章 アウィーコート大戦役

 門は固く閉ざされています。
 巨大な鉄の扉に、巨大な鉄の閂がかけられています。いつもなら、この門は開け放たれていて、住民や旅人が自由に出入りしています。
 道の両側には、レンガづくりの店や宿がたくさん並んでいて、とても賑やかな場所なのですが、今はひっそりとしています。
 ここで商売をしていた人も、ここに住んでいた人も、みんなこの場所を捨ててしまったのです。いくら鉄の扉が締め切られているとはいえ、相手がどんな方法を使ってくるのかわかりません。万が一門が破られて敵がなだれ込んできたら、この近くにいたら無事でいられるはずがありません。住民たちはそれを恐れて、この場所から逃げ去ってしまったのでした。
 ピスティは、守備門を見ました。あの向こうにエカタバガンの大軍が迫っていると考えると、身体が震えそうです。が、震えるわけにはいきません。なぜなら、ピスティは兵士を率いているからです。先頭に立つピスティが怯えてしまっては、ピスティに従っている兵士まで怯えてしまいます。
 ピスティに従っている兵士は、たったの五十人しかいませんでした。はじめは百人いましたが、そのうちの半分は、ここにはいません。ゲンが、
「わしにも人手をいただけませんかな」
 というので、ピスティは百人のうちの五十人をゲンに預けたのです。
 少ない兵士がさらに少なくなって、ピスティはますます心もとない気持ちになりましたが、ゲンはきっと何か良い知恵を秘めているに違いありません。そう信じて、ピスティは自分を励ましたのでした。
 それよりも、今は敵を防ぐための準備をしなくてはいけません。
 ピスティは、五十人の兵士たちに命令しました。

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