ここから始まる物語
第9章 アウィーコート大戦役
「その通りじゃ。ライよ。おぬしも力ばかりではなく、わしの兵法の奥義を見よ」
「おらあには、無理だよ。頭使うの苦手だからな」
「ともあれ、わしらはこの戦いに勝利したのじゃ」
その通りです。敵が引き上げた以上、この戦いで買ったのはアウィーコート側ということになるでしょう。もっとも、エカタバガンがこれで黙っているとは限りません。でも、この場においては、とりあえず安心しても良さそうです。
「助かっただあ」
ライはその場に崩れ落ちました。腕の怪我を見ると、ピスティが巻いた布は、どす黒く染まっています。もう血は止まっているようです。
「ところで――」
ゲンの鋭い目が、ぎらりと光りました。
「――次はピスティさまが王座にお着きになる番ですぞ」
「それは、どういうことなんだい」
ピスティはごくりと唾を飲みました。
戦いが始まる前にも、ゲンはそんなことを言っていました。
この戦いに勝った暁には、ピスティさまを王座へと導きましょう――。
あの言葉は、どういう意味だったのでしょうか。
王座につく、というなら、それはおめでたい話のはずです。なのに、ゲンの目に宿っている光からは、どこか凶暴さを感じます。ピスティも、なぜか嬉しい気持ちを持つことができません。どちらかというと、恐ろしさを感じます。
「この国を裏切った者がいるのです」
「国賊捕縛」
ゲンとフウは、それぞれ氷のような声でそう言いました。
※
いったい、誰が国を裏切ったというのでしょうか。
そしてピスティは、本当に王さまになることができるのでしょうか。もしできたとして、それはピスティにとって幸せなのでしょうか。
「おらあには、無理だよ。頭使うの苦手だからな」
「ともあれ、わしらはこの戦いに勝利したのじゃ」
その通りです。敵が引き上げた以上、この戦いで買ったのはアウィーコート側ということになるでしょう。もっとも、エカタバガンがこれで黙っているとは限りません。でも、この場においては、とりあえず安心しても良さそうです。
「助かっただあ」
ライはその場に崩れ落ちました。腕の怪我を見ると、ピスティが巻いた布は、どす黒く染まっています。もう血は止まっているようです。
「ところで――」
ゲンの鋭い目が、ぎらりと光りました。
「――次はピスティさまが王座にお着きになる番ですぞ」
「それは、どういうことなんだい」
ピスティはごくりと唾を飲みました。
戦いが始まる前にも、ゲンはそんなことを言っていました。
この戦いに勝った暁には、ピスティさまを王座へと導きましょう――。
あの言葉は、どういう意味だったのでしょうか。
王座につく、というなら、それはおめでたい話のはずです。なのに、ゲンの目に宿っている光からは、どこか凶暴さを感じます。ピスティも、なぜか嬉しい気持ちを持つことができません。どちらかというと、恐ろしさを感じます。
「この国を裏切った者がいるのです」
「国賊捕縛」
ゲンとフウは、それぞれ氷のような声でそう言いました。
※
いったい、誰が国を裏切ったというのでしょうか。
そしてピスティは、本当に王さまになることができるのでしょうか。もしできたとして、それはピスティにとって幸せなのでしょうか。