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ここから始まる物語

第9章 アウィーコート大戦役

 その数えきれない数の偽物の兵士は、縄で縦に繋がれていて、先頭を、本物の兵士が引きずっています。それは、ピスティがライに預けた兵士たちでした。
「こんなおもちゃみたいなもので、エカタバガン軍は退いたのか・・・・・・」
 呆れ返って、ピスティは呟きました。
「その通りでございます。これも、ピスティさまが、壊れた鎧や武器や、樫の木を使うことを許してくださったこと、それに、兵士をわしに預けてくださったからこそできたことでございます」
 そういえば、戦いの前に、そんな話をしていました。すっかり忘れていたことですが・・・・・・。
「だとしても、こんなに出来の悪い人形に騙されるなんて、エカタバガンも馬鹿だなあ」
 ライは笑ってます。おかしさ半分、命が助かった安心感半分といったところでしょうか。
「いやいや、敵は決して愚かでないぞ」
 ゲンは厳しい声を出しました。
「もともと、我らアウィーコートがアマヤイシンと手を組む、という話はあったのだ。敵にもその話が届いていたのだろう。いや、届かせたのじゃ」
 ゲンは、ちらりとフウの白い仮面へ目をやりました。
 その視線を受けてか、フウは、肩をかすかに揺らしました。笑ったのでしょう。
 そういえば、フウは途中まで姿を見せませんでした。きっとフウは敵に紛れ込んで、アマヤイシンが軍を出すという噂を広げていたのでしょうか。
「エカタバガンも、アマヤイシンとは敵対したくはないはず。だからこそ、エカタバガンは兵を引きあげたのだろう。敵は身の丈にあった判断をしたのだろうと、わしは思うがのう」
 ゲンは目を閉じて、顎をさすりました。
「そこまで考えていただか」
 ライは、ぱちくりと目をしばたいています。

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