❇️片暉の残照❇️
第9章 城下町と嫉妬の炎
「気をつけていっておいで」
「――――はい…」
成祝の義から数日が過ぎたが、私の生活は以前と変わらぬ穏やかなものだった。
「テイス、無茶はしないようにな?何かあったらちゃんと、ニコルやキロに言うんだぞ?」
「ありがとうお兄様、大丈夫――――新種のハーブを見に行くだけですから…今日はすぐに戻る予定です」
今日は、身分証を持ち城下町の植物研究所に遊びに行く予定だ!
成人したのだから自由に貴族門を身分証提示で出入り自由なのだが…お兄様が心配そうなこちらを見ている。
あの日以来、お兄様は私の事を気にかけてくださるのか、お仕事を抜け出し頻繁に邸に戻ってくる。
「お兄様こそ――――お仕事大丈夫ですか?」
「大丈夫だ!今日中に終わらせる仕事は纏めてきた!
しかし…タイミング的に、今度の夜会がテイスの社交界デビューになるとは…」
今度、王宮にて開催される夜会の招待状が私の元にも届けられたのだ――――。
成人した私が何処かのパーティーに呼ばれるのは予想していたが…
王宮の夜会とは……なんと複雑である。
「ジルベルト様と会わないよう…配慮するつもりだが……はぁ――――」
お兄様はため息をつくと、馬車の準備が出来た事を知り、私を玄関まで見送る。