❇️片暉の残照❇️
第9章 城下町と嫉妬の炎
「お兄様――――本当にありがとう…」
「テイス、気をつけて」
お兄様も一緒に行くと言っていたが…流石に長時間仕事場を離れる事も出来ず――――渋々、見送りだけとなった。
馬車が邸を離れると――――私は「はぁ」と、ため息をついた。
「テイス様……どうされました?」
「お兄様が――――過保護なような気がして…まぁ、原因は私なんだろうけど」
「何か――――あったのですか?」
ニコルに言われドキッとするも…なんて言っていいか分からず「大丈夫」と、その場を濁す。
「しかし、久しぶりですね――――研究所…あの日以来です」
馬車に一緒に乗るキロが唇を噛む。
昨年――――…私を守れなかったキロは、あれから気合いを入れ直し護衛の技術はもちろんのこと、執事の勉強し随分たくましくなった。
昨年よりも身長も伸び――――筋肉もつき…可愛らしい執事から頼もしい執事といった成長を遂げていた。