❇️片暉の残照❇️
第9章 城下町と嫉妬の炎
「おや――――…これはこれは…“じんぞ”に興味がおありですか?」
所長室の扉が開き、入ってきたのは白衣を着た、黒髪の美しい男性だった。
黒髪はニホノ公爵家の特徴のひとつだとお兄様から聞いていたが――――…こんなにも美しい黒があるのかと私は息を飲んだ。
「は、はじめまして――――…テイス・ハジロと申します!」
私は資料をキロに渡し、黒髪の男性に礼をした。
「ハジロ――――…おや、ハジロ公爵家のご令嬢ですか…へぇ~」
黒髪の男性は私を見下ろすと物珍しそうに見回す。
「テイス様、この方は――――シュン・ニホノ様。ニホノ公爵家の三男で国でも数えるほどしかいない植物博士ですよ」
「///博士様?リンデル所長と……一緒の?!」
“植物博士”!?最近知ったのだが、その博士はリンデル所長もその一人である。
「いえいえ、シュン様は私とは比べ物のにならぬほどの…上の博士様です」
「何をおっしゃいますか――――、ご謙遜を」
シュン様は腰まで伸ばした黒い髪を自然に耳にかけるとフフフと笑った。