❇️片暉の残照❇️
第14章 赤い魔の手
「テイス様が…“美しい声は神様も欲しがるから、天使に拾ってもらえるように目印にしてほしい”――――だってさ…」
「――――は?」
細い赤い糸を少年から受けとると…首をかしげる…。
「地獄につれていかれる前に…その目印があれば…天使が見つけて天国に連れていってくれるんだとさ――――…」
声は…俺が唯一…貴族たちに認められた…モノだ――――。
主も――――俺の声を…気に入ってくれていた。
「身につけて…いけ…」
赤い糸を渡した少年は少し悲しげな顔を見せた。
主を危機にさらした男に…どんな感情を持ったかは知らないが――――…
この少年は…俺とは真逆の…者だ…。
「――――じゃぁ…」
少年はグッと顔を上げて――――…俺に背を向けた。
「――――俺は強くなる…」
そう宣言して…出ていった。
少年は、一度も――――振り替えることはなかった。
そして――――――――…
ロンド・サーズ(25)【処刑】
小指に赤い糸を結び――――…
クロード領南にある離島にて…処刑された。
人々は…
彼がいつ、どこで――――…処刑されたのか知ることはなかった。
しかし――――、同時刻に処刑される賊の男とは対照的に、穏やかに…静かに処刑台に進み出たという。
「お世話になりました」
と、言う台詞を綺麗な声で残して――――…。