❇️片暉の残照❇️
第14章 赤い魔の手
「――――テイス嬢の髪…そして、命まで奪おうとしたんだろ?しかも“貴族は滅びろ”と…暴言を吐いたらしいな……そりゃぁ…不敬罪もプラスされて…重い刑になるに決まっているだろ?」
――――そうか…あの台詞も…記録されていたか…。
「で――――…少年は…そんな事を言うためにここに来たのか?」
寒い牢獄に…独り乗り込んで来たんだ…何かあるのだろう…。
「――――なぁ…なんで俺も…テラスから下に落とした?テイス様と一緒に拉致なんかしたら……目覚めた俺が何をするかなんて…お前には予想できただろ?」
――――そうだ…あの時…
護衛でもあるこの少年は別に殺すなり…監禁するなり…やり方はいくらでもあった…。
だが――――俺は…そうせず…
テイス嬢と共に賊に渡した――――…。
殺されようが…捨てられようが…売られようが…
最後まで…テイス嬢の側にいられるように……。
そして――――それは…俺の叶わぬ…
夢――――…だから。
「執事は――――…命つきるまで…主の側を離れない…それが理想だ…夢だ…愛だ…」
「――――なら…なんでお前は主の元を離れた…」
「・・・・・」
離れたく…なかったさ……
だから…
少年とテイス嬢を別々にしたくはなかった…。
離ればなれにしたくなかった…。
「最後まで――――守って…見せろ」
少年は悔しそうに檻を掴むと――――…
ムンズと…手を差し出した――――。
「――――?」
「お前は――――主を間違えた…愛を間違えた…お前は……死んでも仕方のないやつだ!
でも――――…テイス様が…これをお前にと…」
そう言って少年は握っていた拳を開いた…
そこには…
真っ赤な…糸が…一本――――…
「――――赤い…糸?」
「ここに入るのに…チェックが厳しくて…これくらいしか…持ち込めなかったんだ…」