❇️片暉の残照❇️
第18章 疑念の春
「――――俺は…あの人たちを信用していないから…」
ロミが拳を握りながら後回しにしていた書類を睨む。
「は?―――何かあったのか?」
メルトはいつにもなく怒りを表に出す友人を気にした。
「昔な…聞いちゃったんだよ――――“お父様には感謝しないと、偶然のもたらす幸福に”…って…」
意味のよく分からない言葉にメルトは首をかしげた。
「コールが生まれて…義祖父から沢山の花を贈られた時、義母がこの言葉を呟いたんだ。それが、凄く引っ掛かってね………」
「“偶然?”って――――…」
メルトは背中が凍るような感覚に不安を覚えた。
「――――俺のお母様と弟の事故死は…“不幸な偶然”が重なったから…だって、義母が言っていたことを思い出したんだよ――――…」
「え――――…え?まさか…」
「証拠は何もない……15年も前の事故だし…調べようがないんだ…、だけどあの人の口から“偶然”と言う言葉が出ると…疑ってしまうんだ」