
❇️片暉の残照❇️
第20章 母のバラ
ブクブクと何度か息をお湯のなかで吐き出し…ゆっくり浮上すると――――…朝日が湯船に沈む私を照らした。
「お母さん――――…」
ふと、口から無意識のように出た言葉に…自然と涙が出た。
バラ――――…お母さんのバラ…
「お母さんのバラ……」
そう考えるといてもたってもいられず私は湯船から急いで出た!
濡れた体に慌てて眼帯を着け、ガウンを羽織るとクローゼットをあける!
と、湯浴み部屋から出た音に気がついたニコルが部屋に入ってきた!
「テイス様!?ずぶ濡れではないですか!?」
「ニコル!やっぱり植物園が心配です!出掛けましょう!」
私は濡れた髪や体などお構い無しにクローゼットからワンピースを取り出す!
しかし、ニコルはその焦る私の手を優しく止めると…頭を撫でた。
「テイス様――――…分かりました、出掛けましょう…。でも、ちゃんと支度をし、奥様にお伝えしてから参りましょう…ね?」
ハッと我に返ると…自分がずぶ濡れだと言うことにやっと気がついた。
