❇️片暉の残照❇️
第22章 香油と裏切り者
その頃――――…
王宮の王弟宮ではレミが苛立ちを押さえきれず、部屋に飾られた百合の花を花瓶ごと床に叩きつけていた。
「王弟妃様――――!」
「うるさい!」
床に散らばった花瓶の破片や水に使用人が慌ててレミを気遣ったが、それすらも苛立ち怒鳴り散らす!
「あの――――…色狂いが!どこぞで恨みを買ってきたか知らぬが……私の王母宮を…」
王母の地位を獲得し、この国の女帝になり、窮屈で陰気臭い王宮から抜け自分の城を持つ算段だったレミにとって植物園の火災は想定外だった!
元々、レンティス王の婚約者だったレミだが、レンティスの度重なる毒殺未遂の末――――子供が授からないと分かると…次の王候補であるレンティスの弟カロイに無理やり乗りかえ、妃の座に収まった。
しかし、奇跡的に昏睡状態から復活したレンティスが王の座に着くと思惑崩れ“王弟妃”と言う、望まぬ位に止まってしまった!
レミは“女帝”に二度となれないことを悟った。