僕らのStoryline
第1章 鼻先にキス
「♪~~」
部屋のなかは甘ったるい匂いがたちこめている。
康二は鼻歌を歌いながらご機嫌にキッチンに立っている。
「よしっ!!!」
どうやら出来上がったみたいだ。
「よしっ!!!」
俺も康二と同じ言葉を言ってソファーから立ち上がった。
冷蔵庫に何かをしまってるようで。
「なんなん、めめ、大きな声だして」
シンクには今使っていただろうキッチングッズがたくさん。
「あれ?なんもない」
「なにが?」
冷蔵庫をパタンと閉めた康二を見る。
「ちょっと、俺のは?」
ラッピングに使うであろうリボンや可愛い箱があるのに。
「俺のって?」
なに、とぼけたこと言っちゃってんだよ。
「俺の!俺のチョコは?」
「めめも欲しかったん?」
「え?」
「え?じゃないで」
「今の俺に作ってたんじゃないのかよ」
「違うよ、これはみんなにあげんねん!」
なにが、みんなにあげんねん!だよ!
「え?まさか、俺もそのみんなの中の一人なの?」
「何が言いたいん?」
そして、康二は洗い物を始めた。
俺はあまりにショックでフラフラしらながらもといたソファーに戻った。
別に、欲しくねーし。
別に、康二からなんて、欲しくねーし。
泣きそう…
「…め、めめ、起きて!」
「…んっ」
どうやらあのまま俺はソファーで眠ってしまったらしい。
「こうじ…」
「はい、めめ」
「…」
「ハッピーバレンタイン、蓮」
「こうじ…これ…」
「さっき作ってたのはみんなにあげるやつやもん!蓮のは焼いてんやで」
「焼いてた?」
「チョコレートケーキにしたんやけど…普通にチョコがよかった?」
お皿に乗ったチョコレートケーキ。
添えてあるフォークにさっきキッチンで見たオレンジのリボンが結んであった。
「召し上がれ」
「うまっ」
「ほんま?よかった~」
咄嗟に腕をつかみ引き寄せる。
「うわっ!!」
「ありがとう、こうじ」
バックハグみたいになってるから康二の耳もとに唇寄せて話す。
「くすぐったいんよ、それ」
そういいながらも大人しくしてる康二。
「お返し、ホワイトデーまで待つ?それともこのあと…」
ペシン、と頭を叩かれた。
「変態やぞ」
耳と頬を赤くした康二。
「そんな、変態が好きなくせに」
康二の鼻先にキスをした。
end.