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奇跡を信じて

第13章 大地との約束

 6月になり、田村は本拠地に戻った時、再び大地に会おうと決めていた。

 前回のように、三試合目が終わった翌日に、大地が入院している病院へ向かった。

 今回は病室も覚えていたため、受付を通し問題なく入ることができた。

 「こんにちは」と田村は言って、大地のベッドへ向かうと、その日はひとみだけが来ていた。

 二人は田村の方へ振り向くと、
 「タムだ!」と大地は大声を出すと、 

 「田村さん」とひとみは驚いた表情で言った。

 「大地君、元気にしている?この前、手紙を送ってくれてありがとう。今日は、大地君に会いたかったので来たんだ。ところで、大地君の誕生日はいつかな?」と田村が尋ねると、

 「7月4日だよ」と大地が答えた。

 「大地君、誕生日のプレゼントは、何がほしいかな?」と田村が聞くと、

 「田村さん、大地にプレゼントだなんて、こちらに来て頂けるだけで、大地にとって嬉しい思い出ですから、お気持ちだけで十分です」とひとみが言った。
 
 「そんな大した物はできませんから」と田村はひとみに言うと、

 「大地君、何でもいいよ」

 「何でもいいの?」と大地が聞くと、

 「いいよ、何でも言ってごらん」

 「欲しい物はないけど..」と大地が少し躊躇しているようにみえた田村は、

 「欲しい物はないけど、何かな?」

 「タムのホームランが見たいの」と大地は言った。

 「ホームラン?」と田村が言った後、少し考えた末、
 「約束するよ、大地君。頑張って一本打つから」
 と田村は人差し指を出すと、

 「違うよ、ホームラン二本打ってほしいの」と大地は指でピースをした。

 「大地、そんなことを田村選手に言わないの」とひとみが大地に言うと、

 「だって、タムは何でもいいよって、言ったよ」

 「大地、いい加減にしなさい!」とひとみが大地を叱った。

 「大地君を叱らないであげて下さい。私が言い出したことなので、全て私の責任ですから」と田村がひとみに言った後、
 「大地君、僕もがんばってホームランを打つので、大地君も病気をやっつけるんだよ」

 「うん、病気をやっつける」と大地は言った。

 田村は大地に再び会う約束をして、病室を出た。

 そして、田村がタクシーを待っている時、フラッシュが、二、三回光ったような感じたが、気のせいだと思っていた。

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