奇跡を信じて
第23章 プレーボール
(実況中継)
「本日は、ジャガーズとパイレーツの戦いをみなさんにご覧頂きたいと思います。現在、ジャガーズは15勝15敗ですが、首位のパイレーツとの差は8ゲーム差です。ジャガーズが連敗をするようなことがあれば、今年も優勝の望みは厳しいでしょうね」と実況の江川が言った。
すると、ジャガーズのOBであった川籐が、
「何を言っているんですか! 確かに去年までのジャガーズだったら、そう思われても仕方がありませんけど、今年は少し違っていますよ」と言った。
「失礼しました。でも、どのような所が違っていると思われるのですか?」と江川が尋ねた。
「みなさんはあまり知らないと思いますが、あのベテランの田村が、試合後も特打ち、1,000回の素振りをしているのですよ。私も実は不思議だったのです。でも理由が分かりましたよ」と川籐が言った。
「その理由は何ですか?」と江川が聞くと、
「今年、もしもジャガーズが優勝したら教えますよ」と川籐が笑ってごまかした。
一方、副音声では、辛口で有名な久米が、
「今日と明日、パイレーツが勝って、そろそろマジックが点かないですかね。田村は、オールスター戦前後に引退をするのではないですか? 彼も病院で自分の顔を売らなければ、写真週刊誌に載らなかったのに、ほんとうに彼は馬鹿なことをしましたよ」と相変わらず、きつい事を言っていた。
「二回裏、1アウトランナーなしで田村です。カウントは、2‐2。田村、打ちました。レフトがファールゾーンへ走っています。レフトはシングルキャッチで、2アウトです」
大地は幸雄に、
「タムは今度ホームラン打てるかな?」と聞くと、
「タムは、きっと打ってくれるよ」と幸雄が言った。