奇跡を信じて
第37章 パーティーの開始
定刻通りにパーティーは始まった。
テーブル席は全部で10席あり、大地の家族三名とひとみの母親の明子、そして、幸雄の弟の幸二を入れて5名のみが招待席となっていた。
大地を除く4名は、自分達が場違いな所にいるのではないかという緊張で、なかなか食事が喉に通らなかったようであった。
食事が終わりかけた頃、司会者は田村を壇上に呼んだ。
そして、野球評論家等から質問タイムがあった。
最初はごく簡単な質問で、田村も笑って答えていたのだが、最後に久米が次のような質問をしてきた。
「田村さん、ホームラン王、おめでとうございます。ところで、最後の打席でどうして敬遠のボールを打たれたのでしょうか? やはり、ホームラン王をねらいたかったからですか?」
田村は少し苦笑いをして、
「そうですね、それもあるかもしれません」
「普通あの場面だったら、個人的な記録よりチームのことを考えるのが当然ですよね?」と久米が言うと、
「確かにおっしゃる通りです」
田村は少し辛い顔で言った。
それを聞いていた、幸雄と幸二は久米の質問に対し、怒りを感じていた。
その後、久米は続けて、
「以前、確か田村さんは病気の子供たちの見舞いへ行かれていたようですが、今は、有名になられたようなので、行く必要がなくなり良かったですね」
と皮肉を言った。
それを聞いた幸二は立ち上がると、
「ちょっと待って下さい。あんたは田村選手のことを何もわかっていないよ。俺が間違った記事を書いたばかりに、田村選手に迷惑をかけてしまったんだ」
と幸二は言った。
「どういうことなのか、説明をしていただけますか?」と久米が幸二に聞いた。