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いつか秒針のあう頃

第6章 6話 Last

「ああ? ひっでぇ顔だな、こりゃ。
 目ぇ、すげぇ腫れてんね? 
 起きられる?」

「…………無理」

返事をしたら、昨夜何度も同じ言葉を口にしてたことを思い出した。

「あははっ、声、出ねぇのか。
 昨日、いっぱいアンアン言ってたもんね、んふふっ」

あはは、うふふ、じゃないよ。
誰のせいだよ、全く。
自分だけツヤツヤした顔しちゃって。

喋るのが億劫で、視線で出来る限りの不満を表しながら、俺は智くんをじとーっと見ていた。
枕もとの床にペタンと座った智くんが、ベッドの上に頬杖をつく。

「寝起きの翔ちゃん、かわいいな」

ハートマークが語尾についてるみたいに嬉しそうに言った。

手が顔に伸びて来たから目を閉じると、そのまま前髪や眉を撫でてくれる。
気持ち良くて眠気が戻って来るようだ。

「……ご機嫌だね」

「うん。ふふっ。
 オイラ時差ボケ治ったみたい。
 なんか、ちょっと困ってたんだけど、翔ちゃんにさしたら大丈夫になったわ、はははっ」

「…………」

あ、そう……んじゃ、まぁ良かったね……。
俺、もうちょっと寝てようかな……。

「なんだよ、もしかして怒ってる?
 あれは、だってさぁ? 翔ちゃんが悪いもん」

あ?

「仲良く自転車に乗っちゃって、僕の翔ちゃんとか言われてさ。
 またチュゥとかするんじゃないかって、オイラひやひやしたよ」

「はぁ!? 貴方それヤキモチ、げほっ……
 うう、痛ぇ……」

思わず頬を撫でてた智くんの手をむんずと掴んで、言ってる途中で咳が出た。
同時に尻に痛みが走る。

「どした? 寝違えた?」

ちげーよ!
と心の中で突っ込んで脱力する。溜息が出た。




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