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美しい影

第1章 出会い


俺の話もした。
名前はカズ。20歳で、一人暮らし。
売れないロックバンドでギター兼ボーカルをやっている事。
バーでバイトをしている事。
俺も母子家庭だったが15の時に母が亡くなり、頼れる親族もいなかった為に高校を中退して働きだした事など。

俺も貧乏で結構苦労したけれど、亜美の環境はもっと壮絶だった。
亜美の母親は恋愛体質で男に貢ぎまくっていた。そのせいで小さい頃からネグレクトを受け、まともな食事すら与えられていなかった。
また、男が家に来るときは毎回外に追い出されていた。
そして母親が男に振られる度に亜美がいるから振られたんだと怒られていたらしい。
母親に邪険にされて、母親の男にはいたずらされそうになり、もうこれ以上いたくないと家を飛び出してきた。

人生を諦めたような顔でそう話す亜美。
だけど時折見せる、悲しげな瞳が綺麗だった。

気付けばお互いの事を3時間くらい話していた。

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