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居候と実況者が恋に落ちるまで。

第4章 攻略本は売ってないらしいよ?


紗夜side


「それじゃ、高月さん。これからも引き続きよろしくお願いします」

「こちらこそ、よろしくお願いします。私に出来ることを精一杯頑張ります!」

今日はお試し期間最終日の夜。
夕食が食べ終わり、契約更新の話をしていた。

「特に新しく何かを決めたりとか俺はないけど、高月さんは何かある?」

「あっ、えっと…」

『夜だけじゃなくて朝とお昼もご飯を作りたい』それがどうしても口に出せない。

あれから色々調べたから一色さんが『シキ』という名前でゲーム実況者を生業としていること、編集も自分でやっていることを知った。

忙しいだろうし、言えない・・・。
だけど私はリンちゃんに頼まれて一色さんの生活向上をする為にここにいる身。3食しっかりちゃんとしたものを食べるのはその第1歩なのに…!

「えと、その…一色さんは朝はご飯派ですか?!それとも、えっと、お米派ですか?!」

「え、」

ほら!急に朝ご飯のことなんか聞くから一色さん訝しげな表情になっちゃったじゃん!

「ふはっ…高月さんテンパリすぎ。俺変なこと聞いてないのに。ご飯派かお米派かって、どっちも同じじゃん…ふふ」

「うそっ私そんなこと言ってました?!間違えました…ご飯とパンどっちか聞きたくて…」

うう、やってしまった。
だけど一色さんが笑ってくれたのが嬉しい。

「それはどっちか答えたら、これから美味しい朝ごはんが食べられるって解釈で大丈夫?」

「あさ、ごはん。食べてくれるんですか?」

「質問に質問で答えないでよ高月さん」

「すみません…あの、答えていただけたら作ります。美味しい朝ごはん」

なんでだろう。こんな話しているのはご飯の話なのに。ドキドキする。一色さんの言葉ひとつひとつがじんわりと胸に溶けていくような。

「どっちも、好きかな」

ドクン。

『好き』その2文字だけやけに鮮明に聞こえた。
なに、これ。

「じゃ、じゃあ交互にします。ご飯とパン」

私変じゃないかな。ちゃんと答えられてる?

「うん、楽しみにしてる」

「は、い」

変だ。
私の中の何かがおかしい。


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