居候と実況者が恋に落ちるまで。
第4章 攻略本は売ってないらしいよ?
柊真side
《え〜!あのシキが朝ごはんまで食べるようになんの?!有り得ねぇ!あの毎日カロリーバー貪り男が?!》
「変な名前つけんじゃねぇ。…特に用事ないなら切るけど。お前の声聞いてると全然編集に集中できない」
《ひど!用事あるから電話してんのにぃ。いいじゃん、最近のシキくんがどんな生活してるのか聞くくらい》
くそ。コウタの話に付き合いながら字幕の打ち込みをするのは無理だな。さっきから馬鹿みたいにタイプミスが目立つ。
「で、なんだよその用事ってのは」
《それがさ〜マイク?多分マイクだと思うんだけど調子悪くてどうにもならないからシキん家で2人実況撮りたいなーって》
「…いいけど、今日これから?」
横目で見たパソコンのデジタル文字。自分が思っていたより時間が経っていて、午前0時を回るところだ。
《もうストックもないからこれから出来たら嬉しいんだけど、ダメ?》
今までにも何回かこういうことがあって、深夜にコウタが来ては朝までゲームをした。そのまま寝落ちして昼前に腰が痛くて起きる、そんなこともあった。
「ダメだ」
《やった〜じゃあすぐ…え?》
「朝ごはん食べなきゃだし。高月さんが寝てたら起こすかもしれないから、ダメ」
…俺は何を言ってるんだ?
朝ごはんなんて実家を出てからは数える程しか食べていないじゃないか。高月さんが起きてしまったとしても仕事のトラブルでコウタが来たと誤魔化すことだって出来たはずなのに。
そうか。約束、したから。
《ちぇ、それなら仕方ないか。シキん家行くのは明日起きてから、多分昼前くらいにするわ》
「そうしてくれると助かる」
《ところでシキくんや。あれから紗夜ちゃんに何か聞かれなかった?何も無いならこのことは忘れてくれていいんだけどさ》
「は?」
まさかこいつ、妻帯者のくせに…。
学生の頃の悪い癖が今になって再発したか?
「人ん家の家政婦に手出すな!」
《いや誤解!誤解だって!さすがのオレも唯がいんのにそんなことしない!それにオレ昔も今もシキの好きな子には手出してないっしょ?!》
「じゃあなんだよ今の含みのある聞き方!
何か余計なこといったんじゃないだろうな!」
《言ってない!言っては、ない!》
「言って、"は"?・・・もういい、コウタに聞いても埒が明かない、明日の朝俺が高月さんに聞く」
《?!》