
ドSな兄と暮らしています
第6章 汐夏の挑戦
「えー!今から〜!」
「当たり前だ。ちょっとずつ進めて、少なくとも今月中に1年生の数1は解き直し終わらすよ」
と言うと兄ちゃんはどこからともなく、数1の教科書と、真新しいノートを取り出した。
結構ハイスピードでやって行くのね……
すっかりノータッチになった数1の最初の方は、忘れているところも多い。何だっけこれみたいな問題ばっかりだ。
兄ちゃんはペンが止まると、どこが忘れてしまっているのか、わからないのか丁寧に聞いてくる。
説明を聞きながらやってみると、意外と解けるのは、兄ちゃんの教え方が上手いからだ。
まるっと1回分のテストを解き直したあと、兄ちゃんは教科書の今のテストと同じ範囲のところから、練習問題に付箋を貼る。
「このテストと同じやり方の問題、10問あるから、復習でやっておいてね。タイムリミットは、明日俺が風呂上がるまでってことにしよう」
兄ちゃんは楽しそうにニヤニヤする。
いやいや、全然楽しくない問題ばっかりなのですが……
「じゅ、10問も……終わるかな」
「大丈夫、基礎問題ばっかりだから、今日教えたやり方で全部解けるよ。自力で頑張るのも大事だから、必ず解いておくようにね」
「解けなかったら……?」
恐る恐る尋ねると、
「考えても解けなくてわかんないなら、置いといてOK。教えるから。でも最初からやらなかったら、それは、何らかのお仕置があると思って、それなりの覚悟をしといてね」
それをさらっと笑顔でいうのが兄ちゃんだ。
……なにそれ怖すぎる!! 絶対やる、絶対に終わらせときますわ……。
「それじゃ、今日はここまでってことで」
「あ、ありがとうございました……」
「じゃ、俺お風呂沸かしてくるわ〜」
兄ちゃんはすっと立ち上がると、お風呂を沸かしにリビングを出て行った。
「ひぇ〜〜大変なことになった〜」
私は机に突っ伏すと、目を閉じて、大きく息をつく。フル回転させていた脳を休ませることにした。
受験まではまだ時間があるとはいえ、大学受験は茨の道だと思い知らされる。
頑張らなくては。2回、大きく深呼吸をして、付箋を貼られた問題に向き合うことにした。
