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ドSな兄と暮らしています

第2章 生活

恐る恐るおにぎりとカロリーメイトを受け取ろうと、手のひらを出したその時。

ーーカチャ。

ん?おにぎりでもカロリーメイトでもない何かが手に触れる。
そっーと手のひらを開くと、自転車の鍵が出てきた。

「え!!! 自転車、直ったの?!」

驚いて、目を輝かせる。

「そうだよ、昨日夜な夜な直しといたの。誰かさんが空気入ってないまま砂利道運転してパンクさせたタイヤをな。」

良かった、怒られることはなかったとほっとしつつ、兄ちゃんにお礼を言う。
パンクしたって言ったとき、「物は大事にしろ!!」って絞られたからなぁ……。

「直してくれて、ありがとう!!!」

助かった!今日は遅刻を免れる。寝坊する運命でも、遅刻する運命を毎日背負わされるのはごめんだからね。

「ゆっくり行け。少し時間の余裕ができたんだから。でも遅刻はするな。今日で遅刻何日目だっけ?」

ほっとしたのも束の間。兄ちゃん、すこーし説教モード入ってない?
腕を組み、仁王立ちの兄ちゃんに返す言葉もない。

「ごめんなさい……えっと……お、覚えてない……です……5日くらいですか?」

地雷をなるたけ踏まないようにと、無意識に敬語になってしまったが、大外れだった。
兄ちゃんの言葉尻に怒気がはらむ。

「11日目! そろそろ先生から電話がかかってくる頃だぞ。しっかり気引き締めろよ」

「う……、はい」

わたしの返事を確認すると、兄ちゃんは腕組みを解き、私の背の高さに目線を合わせた。

「良い子だ。行ってらっしゃい」

と言って、私の頭をぽんぽんと2回撫でる。出かけに頭をなでるのは、小さい頃からずっと変わらない。兄ちゃんの温かくて大きい手も変わらない。
どれだけ怒られていても、この手に触れられただけで、少し安心してしまう。

「行ってきますぅ……」

ちょっと怖かったのと、いつも照れくさいのとが混ざって、言葉が縮んでしまう。

結局、説教付きドッキリを仕掛けられて、しおしおと家を出る。自転車のスタンドを蹴り上げて、またがると、ゆっくりとペダルを漕いだ。

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