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ドSな兄と暮らしています

第6章 汐夏の挑戦

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完全に油断していた。
兄ちゃんは寝る前になって、私を呼び止めた。

「汐夏、ちょっと」

なんの危機感もなく、「ん?」と返事をする。

「布団に正座」

と端的に言われて、ようやくはっとする。
これは非常にまずい。だいたい正座させられる時って、なんかある。

そうして頭の中の記憶を駆け巡って、ようやく、間に合わなかった問題と、『お仕置』の存在を思い出した。

思い出した時にはもう遅い。

逃げることも隠れることもできないから、言われた通りにゆっくりと正座した。

「汐夏、いますっかり忘れてたな?」

と言われてドキッとする。
目の前に腕組み、仁王立ちの兄ちゃん。
顔は既に、鬼。
ここで嘘をつこうという度胸は、私にはない。

「わ、忘れてました……」

「正座させられるにあたって、思い当たることは?」

俯いておっかなびっくり答える。

「あの……数学の問題、今日は、ちゃんと終わらせないまま……兄ちゃんに教わる時間になったこと……です」

あぁ、なんで今まで忘れていたのかとすら思う。
こうなる心の準備ができたのに。

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