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ドSな兄と暮らしています

第6章 汐夏の挑戦

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「今日の数学は、これで終わり。明日はいよいよ試験だね」

1月の中旬。今日は1次試験の前日。
数学は1次試験でしか使わないから、兄ちゃんとこうして勉強するのもこれで最後だ。

去年の12月から、驚くほどのスピードで1年が過ぎていった。正直、つらくて逃げ出したい時もあったけれど、必ず兄ちゃんがそばにいた。

私が逃げられないようにするためではない。
一緒に逃げたいものと戦うためにいてくれた。
兄ちゃんがいなかったら、きっと今まで、ここまで頑張って来れなかった。

「兄ちゃん」
「ん?」

私は兄ちゃんに、お礼を伝えた。

「数学、毎日見てくれて、ありがとう」

「おう」

改めてそう伝えると、兄ちゃんは私の頭をくしゃくしゃと撫でた。そうして、私の目をみてこう言った。

「汐夏。汐夏の中に今あるものを使えば、試験は大丈夫だ。焦らずに、正確に、一つ一つ解いていけよ」

私はこの時間が終わるのが、少し寂しかった。

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