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変態ですけど、何か?

第10章 レクイエム

お花見から帰ってきて、浴衣を畳みながら玲子先生が言った。

「ねえ、里帆。
私だったら・・・」
玲子先生が手を止めた。

「もし、私だったら、
私の亡霊になんて捕らわれないで、
自分の人生を生きて欲しいと思うわ
忘れてしまわれるのは、ちょっと悲しいけど、
里帆がずっと十字架を背負いながら生きていく事を望んだりはしないよ」

「玲子先生、どうして?」

あたしは言葉を継げない。
玲子先生は、秋野玲子の存在を知っていたのだろうか?

「私は、何も知らないわ。
ただ、想像で話してるだけ。
でもね、一年近く里帆と付き合ってきて、なんとなくわかるのよ。
里帆が、とても大切な存在を喪ったんじゃないかって。
そして、それは自分のせいだって、罪悪感を抱いているんじゃないかって・・・」

玲子先生が続けた。

「でもね、そんな罪悪感を抱いてもらっても、少しも嬉しくない。
里帆が贖罪の気持ちでこれから生きていくなんて、耐えられないと思うな」

玲子先生の言葉は、秋野玲子が、先生の口を借りて、あたしに言っているように思えた。

「玲子!」

あたしは叫ぶように言った。

「やっぱり、秋野玲子さんだったのね?」

玲子先生が言った。

あたしが、答えられずにいると

「いいのよ。何も言わなくて。
でもね、里帆。
彼女もきっと、私と同じ思いだったと思うよ」

「玲子先生!!」

あたしは玲子先生に抱きついて、
いつまでもいつまでも、泣いていた。

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