テキストサイズ

まどろみは君の隣で

第1章 安全なラブソング

「……しぃ。しぃ、起きないと遅刻するよ。今日一限からでしょ」

 肩を弱い力で揺らされる感覚に、落ちていた意識が浮上する。ぼんやりとした視界の中に整った顔が映った。

「……透くん」
「おはよう。朝ご飯出来てるよ」
「……うん」

 三崎透。私の幼馴染みであり同居人だ。社会人である透くんの部屋に居着いたのは一年前。私が高校を卒業した直後だった。透くんは大学から都会に出て一人暮らしをしていた。地元を離れたくて仕方のなかった私は、透くんを頼って一人都会へ。透くんも始めは嫌だとか一人で住みなよとかウダウダ言っていたけれど、この人は昔から私に甘い。お願い、もうあそこにいたくないの。そう言って泣けば同居を許してくれ、その上私の親まで説得してくれた。フェイクとして地元の大学も受験していたから、親は直前まで私が都会の大学に行くことを知らなかった。猛反対されたけれど、透くんが一緒なら、と許してくれた。さすがイケメンで世渡り上手の透くん、私の親の信頼まで知らない内に勝ち取っていたらしい。

ストーリーメニュー

TOPTOPへ