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まどろみは君の隣で

第1章 安全なラブソング

「ほい、ココア」
「ありがと」

 透くんはお人好しだと思う。彼だってきっと相当モテるだろうから、この部屋に女の子を連れ込んであんなことやそんなこと、したいだろうに。四つ年下の色気皆無の女子大生を住まわせ更に美味しいご飯まで用意してくれる。
 朝ご飯はチーズの乗った食パンにキャベツときゅうりとトマトのサラダ。そしてコーヒーが飲めない私のためにわざわざココアも淹れて。透くんは優しいね、前にそう言えば透くんはだからモテるんだよとニコッと笑った。

「今日はバイト?」
「うん」
「なら晩飯はいらないね」
「いらない」
「気をつけて帰ってくるんだよ。常に携帯手に持って、いつでも俺を呼べるようにしといて」
「わかってるってば」
「じゃあ俺先行くからね。戸締りよろしく」
「はい」

 スーツを着てネクタイをキュッと締める透くんは幼馴染みの贔屓目に見なくても文句無しに格好良い。いってきます、いってらっしゃい、当たり前になった挨拶を交わした後。透くんがそうだ、と立ち止まった。

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