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優しく咲く春 〜先生とわたし〜

第8章 本当の話をしよう

謝らないで……わたしは……。

春ちゃんが、わたしの顔を覗き込む。
寝てるんじゃないか、そう思ったのかもしれない。

わたしはゆっくりと目を開けた。
春ちゃんと目が合って、目を閉じる。
息を大きく吸って、ゆっくりと吐いてから、わたしは思っていたことを口にした。

「わたしは……心臓が止まったとき。優と春ちゃんに助けてもらって……すごく感謝したんだ」

春ちゃんが抱きしめる力を、僅かに強くする。
優が、息を飲む音が聞こえた。

「小さい頃に、わたしのお父さんだって、言った人がいて。その人は、きっと、優のお父さんだと思う。死にそうになったとき、あの人について行けたらどれだけ良かったんだろうって思ったんだ。でもね、優のせいじゃないって思う。ついていけなかったけど、優のせいじゃない」

一生懸命、思ったことを紡いだ。
今までにないくらい、頭が回転していた。
空気が震える。
気配で、優が涙を噛み殺しているのがわかった。

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