優しく咲く春 〜先生とわたし〜
第21章 番外編 ちょっとそこまで
車を出して、隣町まで走らせる。
助手席の春斗が嬉しそうに笑う。もちろん尻尾は最大の振り幅。やれやれと思いつつ、ラジオをかけた。
「あ、俺これ好き。日曜の午後って感じがして」
春斗がラジオに耳を傾けながら、そう言った。
ラジオはよくある番組だが、日曜の午後にパーソナリティをしている、聞き馴染みのある声の主だった。
前は2人暮らし、学生の頃なんかはしょっちゅう、安い軽の中古車で好き勝手出かけていた。
専ら、行先は安くて長居できるようなファミレスだったり、カラオケ屋だったり。大抵、途方もなく膨大な試験に向けての勉強をしていた。
息抜きに歌う、下手くそな春斗の歌声を思い出して、苦笑いする。
「……春斗、歌下手だったよな……」
「な?! 急になんだよ……! 意外と気にしてるんだから、他の人の前では歌わないんだよ」
「すまん」
笑いながら言うと、春斗も笑った。
きっと同じことを思い出している。
「カラオケとか、あれから行ってないよ」
就職してからは、当たり前に遠ざかっていってしまった、日常である。
夏に、3人で旅行に行った時は、春斗も俺も運転したが、咲が来てから2人きりで出かけたことはなかったことを思い出す。
ラジオに耳を傾けながら、春斗が不意に零した。
「……なんか、懐かしいね、優」
はしゃぐ気持ちと、昔の懐かしいところに落ち着くような気持ちを半々にしたような声で春斗が言った。
横顔をみると、遠くを眺めて、過ぎていく街の景色に目をキョロキョロさせていた。
助手席の春斗が嬉しそうに笑う。もちろん尻尾は最大の振り幅。やれやれと思いつつ、ラジオをかけた。
「あ、俺これ好き。日曜の午後って感じがして」
春斗がラジオに耳を傾けながら、そう言った。
ラジオはよくある番組だが、日曜の午後にパーソナリティをしている、聞き馴染みのある声の主だった。
前は2人暮らし、学生の頃なんかはしょっちゅう、安い軽の中古車で好き勝手出かけていた。
専ら、行先は安くて長居できるようなファミレスだったり、カラオケ屋だったり。大抵、途方もなく膨大な試験に向けての勉強をしていた。
息抜きに歌う、下手くそな春斗の歌声を思い出して、苦笑いする。
「……春斗、歌下手だったよな……」
「な?! 急になんだよ……! 意外と気にしてるんだから、他の人の前では歌わないんだよ」
「すまん」
笑いながら言うと、春斗も笑った。
きっと同じことを思い出している。
「カラオケとか、あれから行ってないよ」
就職してからは、当たり前に遠ざかっていってしまった、日常である。
夏に、3人で旅行に行った時は、春斗も俺も運転したが、咲が来てから2人きりで出かけたことはなかったことを思い出す。
ラジオに耳を傾けながら、春斗が不意に零した。
「……なんか、懐かしいね、優」
はしゃぐ気持ちと、昔の懐かしいところに落ち着くような気持ちを半々にしたような声で春斗が言った。
横顔をみると、遠くを眺めて、過ぎていく街の景色に目をキョロキョロさせていた。