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優しく咲く春 〜先生とわたし〜

第8章 本当の話をしよう

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「はーい、ペン置いて〜、答案裏返す〜。後ろの人、回収よろしく〜」

井田先生の一言で、張り詰めた空気が一瞬で緩んでいった。

1学期の期末試験。気づけば季節は夏になり、7月も後半に差し掛かっていた。

わたしはどっと溜息をついた。解けないことはなかったけど、手応えが前より薄い。
もっと勉強すればもう少し良かったかもなぁと思いつつ、2学期は頑張ろうとも思っていた。

みんなもザワザワと緩んだ空気の中で呟く。

「もーう、難しい……」

「井田先生のテストにしては捻ってた……」

言いながら、机に突っ伏す生徒を横目に、井田先生は笑う。

「ははっ。中間テストの出来がみんな結構良かったから、今回はふるいをかけてみたよ〜。みんなの点数が楽しみだなぁ」

怖すぎ。サイコパスとはこのこと。
クラス中からのブーイングを受け止めて、答案を脇に抱える。

「じゃあ、期末試験はここまで〜! 今週は続々とテストが返ってくるから、覚悟しておいてよ〜。来週から夏休みね。みんなお疲れ様〜」

颯爽と井田先生は去っていった。
落とされたテンションが、『夏休み』の単語だけで一気に上がる。
すでにクラスではどこに行くとか何をするとかの話でもちきりだった。

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