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優しく咲く春 〜先生とわたし〜

第8章 本当の話をしよう

屋上で、もう歩けないだろうと背中を貸したとき、咲は素直に身を預けてきた。
背中に預けられた体重は、やっぱりまだまだ軽い。
手を繋ぐのは躊躇っていたのに、直ぐに背中にしがみついたのは、疲れて電池切れだったからのようだ。

「あの話……咲にして、良かったか?」

俺は、春斗に尋ねる。
春斗は頷いて前を見据えながら穏やかに言った。

「良かったと思う。咲はきっと、選ばれてここに来たね」

「……そうだな」

偶然が重なって、咲はいまここにいる。
だけれど、なんとなくそれは必然だったとも思う。
咲は、咲自身が助かるために。俺と春斗は咲に助けられるために。

そのために、咲と、俺と春斗は出会ったんだと、思わざるを得ない。

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