龍と鳳
第4章 大野丸
孔雀と雉を足して2で割ったようなその鳥は、ほのかに山の神様のご神気をまとっていた。
けど、こんな海のど真ん中で、なんで突然霊鳥が現れるんだろう。
完全なエネルギー体ではないみたいで実体がある。
翔君にも姿が見えてて、しかも何故かお互いに気に入ったらしい。
人慣れしているのか怯えた風もなく、翔君がシラスを与えるとバクバクと食べた。
「翔君、何か雲行きが怪しくなってきた
少し早いけど戻るよ」
鳥が来て急に空気が変わった。
オイラは龍の気配を遠くに感じながら、西を見やる。
「マジで?だってまだ晴れてるよ」
「うん、間もなく嫌な風が吹いてくるよ」
言ってるそばから嵐を呼ぶ風が生あたたかく吹き始め、オイラの前髪を揺らした。遅かったか。
慌ててアンカーを戻す間も、凄まじい龍の怒気が猛スピードで近づいて来る。
舵に手をかけた時、大野丸の真上で止まった。
でかい!!
立っているのが厳しい程の強風で波が立ち、船が頼りなく揺れる。
突然振り出した雨が風で斜めになって、全身にバラバラと当たった。
「智君っ」
しゃがんだ翔君が鳥を庇って覆いかぶさっている。
「そのままっ」
オイラは翔君に叫んだ後、ハンドルから離した両手で柏手を打ち祝詞を大声で唱えた。
終わった瞬間に雨がピタリと止む。
『人の子よ、鳳雛を返せ』
龍の想念が圧を持って響き、空間を震わせた。
「えっ、ほうすう?」
『汝、其が鳳凰の雛と知って連れ帰るつもりか
天からの賜りものと思うたか』
「えっ、鳳凰の雛!?
翔君っ、その鳥、今すぐ放して」
「えっ!?」
『其は我が背より誤りて滑り落ちたに過ぎぬ
今すぐに天に返せ
さもなくば』
「その鳥は神様のお使いだっ
すぐに返さないと龍神の逆鱗に触れるっ」
オイラの顔と鳳雛を見比べた翔君が、慌てたように雛から離れた。
『我が怒り思い知らせてやろう』
バリバリバリッという轟音と共に、幾筋もの雷が横に走った。
キューーーーーーイ…………。
甲高い悲鳴のような鳥の声がして、同時に船が大きく揺れる。
あまりの衝撃で飛び跳ねてから、着地に失敗した状態で座り込んだオイラは、翔君をただ強く抱きしめた。
……荒れていた海が次第に凪いでいって。
龍神の気配が嵐と共に去って行ったのを感じて目を開ける。
オイラの腕の中で、腰を抜かした翔君が目を回していた。
けど、こんな海のど真ん中で、なんで突然霊鳥が現れるんだろう。
完全なエネルギー体ではないみたいで実体がある。
翔君にも姿が見えてて、しかも何故かお互いに気に入ったらしい。
人慣れしているのか怯えた風もなく、翔君がシラスを与えるとバクバクと食べた。
「翔君、何か雲行きが怪しくなってきた
少し早いけど戻るよ」
鳥が来て急に空気が変わった。
オイラは龍の気配を遠くに感じながら、西を見やる。
「マジで?だってまだ晴れてるよ」
「うん、間もなく嫌な風が吹いてくるよ」
言ってるそばから嵐を呼ぶ風が生あたたかく吹き始め、オイラの前髪を揺らした。遅かったか。
慌ててアンカーを戻す間も、凄まじい龍の怒気が猛スピードで近づいて来る。
舵に手をかけた時、大野丸の真上で止まった。
でかい!!
立っているのが厳しい程の強風で波が立ち、船が頼りなく揺れる。
突然振り出した雨が風で斜めになって、全身にバラバラと当たった。
「智君っ」
しゃがんだ翔君が鳥を庇って覆いかぶさっている。
「そのままっ」
オイラは翔君に叫んだ後、ハンドルから離した両手で柏手を打ち祝詞を大声で唱えた。
終わった瞬間に雨がピタリと止む。
『人の子よ、鳳雛を返せ』
龍の想念が圧を持って響き、空間を震わせた。
「えっ、ほうすう?」
『汝、其が鳳凰の雛と知って連れ帰るつもりか
天からの賜りものと思うたか』
「えっ、鳳凰の雛!?
翔君っ、その鳥、今すぐ放して」
「えっ!?」
『其は我が背より誤りて滑り落ちたに過ぎぬ
今すぐに天に返せ
さもなくば』
「その鳥は神様のお使いだっ
すぐに返さないと龍神の逆鱗に触れるっ」
オイラの顔と鳳雛を見比べた翔君が、慌てたように雛から離れた。
『我が怒り思い知らせてやろう』
バリバリバリッという轟音と共に、幾筋もの雷が横に走った。
キューーーーーーイ…………。
甲高い悲鳴のような鳥の声がして、同時に船が大きく揺れる。
あまりの衝撃で飛び跳ねてから、着地に失敗した状態で座り込んだオイラは、翔君をただ強く抱きしめた。
……荒れていた海が次第に凪いでいって。
龍神の気配が嵐と共に去って行ったのを感じて目を開ける。
オイラの腕の中で、腰を抜かした翔君が目を回していた。