龍と鳳
第10章 讃歌
羽団扇を振った健くんが、オレに気がついて、しまった! て顔をしたのが一瞬見えた。
え? と思ったと同時に、上から人間が転がり落ちてくる。
とっさに振り向いてニノを抱えたオレの背中に、人間がドンッと当たった。
「グッ!!」
重さに耐えられずに足が浮いて、ニノミヤを押し倒した格好のまま、オレ達は二人して転がっていく。
ぐるぐる回る視界の隅で、落ちてきた人間がブナの幹に当たって止まったのが見えた。
背中に貼り付いてた陰はあやかしか!?
「ニノッ!!」
雪解け水を含んだ山肌は滑りやすく、昨夜の雨の名残を乗せた繁みは必死に掴もうと伸ばしたオレの手をすり抜けていく。
お山の木々は古木が多い。
太い根や幹に頭を強くぶつけたりしたら、人間なんてすぐに死んでしまう。
転がりながら片手でニノの後ろ頭を守るように抱いて、もう片方の手で腰のベルトをしっかり握った。
ガツンと衝撃があって手の甲が岩をかすったのが分かる。
「痛っ!!」
「ウッ!!」
ニノミヤの息を詰めたようなうめき声が上がる。
「ニノッ!!」
天狗の念話が飛んできた。
『ちびっ、その先は滝だ!!』
枯葉の吹き溜まりになっている溝にはまって、ますます滑りが加速する。
湧きだした地下水が表に出て、流れ落ちる水路になってるんだろう。
『落ちる!!飛べっ!!!』
『大地を蹴るんだ!!
翼を出せっ!!!』
考える余裕もなくニノを抱えたまま、言われた通りに両脚で大地を蹴った。
突然視界が開けて周囲にあった木々が消える。
近くに居たお山の鳥たちが、驚いて一斉に飛び立つ羽音を聴きながら、俺の目は現れた瀑布を捕らえた。
智の背中に乗っている時以外で初めてだ。
自分の翼で空中に浮いてる!!
両脚でニノのベルトをしっかり掴んでいるけど、でも、重さでどんどん下降していくのがわかった。
「神様!!」
恐怖のあまり叫ぶと同時に、下からびゅぅっと風が吹き上げてくる。神様の風だ。
つかめ!
つかめ!!
風を掴めっ!!!
翼を広げろっ!!!
人の子を落とすなっ!!!
必死に自分に言い聞かせていると、なんとか翼が風をはらむ。
そのまま上昇気流に乗ってふわりと浮き上がった。
え? と思ったと同時に、上から人間が転がり落ちてくる。
とっさに振り向いてニノを抱えたオレの背中に、人間がドンッと当たった。
「グッ!!」
重さに耐えられずに足が浮いて、ニノミヤを押し倒した格好のまま、オレ達は二人して転がっていく。
ぐるぐる回る視界の隅で、落ちてきた人間がブナの幹に当たって止まったのが見えた。
背中に貼り付いてた陰はあやかしか!?
「ニノッ!!」
雪解け水を含んだ山肌は滑りやすく、昨夜の雨の名残を乗せた繁みは必死に掴もうと伸ばしたオレの手をすり抜けていく。
お山の木々は古木が多い。
太い根や幹に頭を強くぶつけたりしたら、人間なんてすぐに死んでしまう。
転がりながら片手でニノの後ろ頭を守るように抱いて、もう片方の手で腰のベルトをしっかり握った。
ガツンと衝撃があって手の甲が岩をかすったのが分かる。
「痛っ!!」
「ウッ!!」
ニノミヤの息を詰めたようなうめき声が上がる。
「ニノッ!!」
天狗の念話が飛んできた。
『ちびっ、その先は滝だ!!』
枯葉の吹き溜まりになっている溝にはまって、ますます滑りが加速する。
湧きだした地下水が表に出て、流れ落ちる水路になってるんだろう。
『落ちる!!飛べっ!!!』
『大地を蹴るんだ!!
翼を出せっ!!!』
考える余裕もなくニノを抱えたまま、言われた通りに両脚で大地を蹴った。
突然視界が開けて周囲にあった木々が消える。
近くに居たお山の鳥たちが、驚いて一斉に飛び立つ羽音を聴きながら、俺の目は現れた瀑布を捕らえた。
智の背中に乗っている時以外で初めてだ。
自分の翼で空中に浮いてる!!
両脚でニノのベルトをしっかり掴んでいるけど、でも、重さでどんどん下降していくのがわかった。
「神様!!」
恐怖のあまり叫ぶと同時に、下からびゅぅっと風が吹き上げてくる。神様の風だ。
つかめ!
つかめ!!
風を掴めっ!!!
翼を広げろっ!!!
人の子を落とすなっ!!!
必死に自分に言い聞かせていると、なんとか翼が風をはらむ。
そのまま上昇気流に乗ってふわりと浮き上がった。