龍と鳳
第15章 邂逅
オイラ達が人形(ヒトガタ)を解くとき、初めは頭の先から黄金の光がにじみ出て、それが全身に回り輪郭が輝きだす。
次第に躰全部が光り出し、形が不安定になって。一旦珠のように丸くなってから、まるで卵から龍が生まれ出るように一瞬で飛び出してくるんだ。
でも、しょーちゃんはこの時、珠の状態から龍に変容しなかった。
娘がいると思しき辺りから黒いモヤモヤがしょーちゃんに向かって流れるように動いているのが見える。
もしかしてあれは、娘の魂をこの世に縛る陰の気を吸い取っているんじゃないか。
何か危ない……。
これ、ダメなやつだ!!
オイラが思い至って怖くなった時、お山の神様がしょーちゃんに向けて仰った。
『もうよい。あとは儂が引き受けよう』
『…………』
神様が呼びかけているのに、しょーちゃんの応えがない。
一の眷属であるしょーちゃんにお声が聴こえない筈はないのに。
オイラはまだ知らなかったんだけど。
肉体が放つ死の穢れは、オイラ達にとってはまごうことなき害だった。
しかも、存在の波動が高ければ高い程、より大きく損なわれる。
だからこそ、喪中の人間が神社に参拝するのを眷属は何よりも嫌がるんだ。神様でさえ喪を付けた者が来るとお隠れになる。
二形(フタナリ)は、人の子の姿も持つからまだマシだけど、お山の神様はオイラ達よりもずっと波動が高い。
しょーちゃんは、この時、娘の穢れを引き受けるのは自分しか居ない、って思い定めて臨んでた。
しょーちゃんのイノチそのものと言ってもいい緋い珠。
それが、靄を吸い込むたびに弱くなっていくようで。
「しょーちゃん!! もうやめて!!!」
オイラはこの先どうなるか、知ってる。
見たことがある。
美しい光が貪られるように消えていく様を、昔、空の上で見たんだ。
『昇龍』
『…………』
しょーちゃん!!!
ダメだ!!
オイラを残して消えるなんて!!!
「そんなのダメなんだあああ~~~~!!!!」
『智!』
「智君!?」
無我夢中でしょーちゃんの所へ行こうとして、気がついたら裸足のままで走り出してた。
神様の制止は聞こえていたけれど、振り切って夜空に飛び込む。
重い雲が垂れ下がっているお山から、稲光が照らす里を目指した。
しょーちゃん!!
しょーちゃん!!!!
心にただ一つ、想いだけ握りしめて。
次第に躰全部が光り出し、形が不安定になって。一旦珠のように丸くなってから、まるで卵から龍が生まれ出るように一瞬で飛び出してくるんだ。
でも、しょーちゃんはこの時、珠の状態から龍に変容しなかった。
娘がいると思しき辺りから黒いモヤモヤがしょーちゃんに向かって流れるように動いているのが見える。
もしかしてあれは、娘の魂をこの世に縛る陰の気を吸い取っているんじゃないか。
何か危ない……。
これ、ダメなやつだ!!
オイラが思い至って怖くなった時、お山の神様がしょーちゃんに向けて仰った。
『もうよい。あとは儂が引き受けよう』
『…………』
神様が呼びかけているのに、しょーちゃんの応えがない。
一の眷属であるしょーちゃんにお声が聴こえない筈はないのに。
オイラはまだ知らなかったんだけど。
肉体が放つ死の穢れは、オイラ達にとってはまごうことなき害だった。
しかも、存在の波動が高ければ高い程、より大きく損なわれる。
だからこそ、喪中の人間が神社に参拝するのを眷属は何よりも嫌がるんだ。神様でさえ喪を付けた者が来るとお隠れになる。
二形(フタナリ)は、人の子の姿も持つからまだマシだけど、お山の神様はオイラ達よりもずっと波動が高い。
しょーちゃんは、この時、娘の穢れを引き受けるのは自分しか居ない、って思い定めて臨んでた。
しょーちゃんのイノチそのものと言ってもいい緋い珠。
それが、靄を吸い込むたびに弱くなっていくようで。
「しょーちゃん!! もうやめて!!!」
オイラはこの先どうなるか、知ってる。
見たことがある。
美しい光が貪られるように消えていく様を、昔、空の上で見たんだ。
『昇龍』
『…………』
しょーちゃん!!!
ダメだ!!
オイラを残して消えるなんて!!!
「そんなのダメなんだあああ~~~~!!!!」
『智!』
「智君!?」
無我夢中でしょーちゃんの所へ行こうとして、気がついたら裸足のままで走り出してた。
神様の制止は聞こえていたけれど、振り切って夜空に飛び込む。
重い雲が垂れ下がっているお山から、稲光が照らす里を目指した。
しょーちゃん!!
しょーちゃん!!!!
心にただ一つ、想いだけ握りしめて。