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無人島行ってみた話

第1章 雑誌広告

それは、1995年の夏。

その年の1月17日には、阪神淡路大震災があって、世間的にはまだ、それほど落ち着いてはいなかった。

被災地では、アウトドアグッズが役に立っていたようで、ボランティアの方々が、テントと寝袋で寝泊まりしたり、泥水をろ過したのち煮沸して飲み水にしたといった話を聞きました。

僕も当時、大阪の豊中市にいまして、そこもかなり揺れて地震の恐ろしさを体験しました。

理容師でありましたから、被災地に出向き、カットのボランティアにも参加し、青空散髪として西宮のとある学校の校庭で、被災者の方の髪をカットさせていただきました。また、その頃、副業でマジシャンとしての顔も持っておりました。

そしてその年の夏。

理容師のお盆休み……といっても世間一般のお盆とは日がズレたりもするんですが、その1週間ほど前のこと。

週1回の休みの日に、僕が住んでるアパートに、友人が訪ねてきた。今みたいに、携帯電話を誰もが持ってる時代ではなく、手土産なしに突然やってくる。

『コンコココンコン』

友人はリズミカルに、ノックをする。

こっちはその音で、誰が来たかがわかる。

だから「いま留守でーす」と返す。

「声してるやんけ。開けろや」

タメ口だが、一つ年下の安藤と言う男だ。理容師だが、3回連続で理容師免許の学科試験に落ちて、半ば諦めながら無免許理容師として仕事をしている。だが本来、免許がなければお客さんの頭を触ることは、法律上許されないことで、それをわかっていながら、当時無免許でカット、パーマ等をやっていたという怖いもの知らずの身のほど知らずだ。ちなみに、免許を取ったのは三十を過ぎてからで、取得してからすぐやめて、現在は郵便局で働いている。



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