メランコリック・ウォール
第53章 Truth
ゆりちゃんからもらったクチナシの花が咲いた。
純白の愛らしい花に触れ、遠いウォールシイナを思った。
「また夏がくるな」
一緒に庭へ出ていたお父様がつぶやく。
「…はい。」
2人で、少し曇った空を眺めた。
とんびが高く旋回している――…。
「こうやって何度も何度も、四季が流れる。変わることもありゃあ、変わらんこともあるが…。」
お父様もクチナシの花に優しく触れた。
キョウちゃんは縁側で黙って見ている。
クチナシの花びらは、私とお父様の指先の熱に喜んでいるようにも見えた。
「…最後に残るのは、真実だけだ。お前さん、せがれに添い遂げたいと言ったのは真実だな?」
「はい。心から…。」
まっすぐにお父様を見る。
「うむ。アンタぁ、よう働くし、可愛らしいお嬢さんだ。人から奪い取りたくもなる。」
お父様はキョウちゃんに目配せして微笑み、キョウちゃんもまたククッと笑った。
笑って話せるくらいには、時が経っていた。