
戦場のマリオネット
第5章 真実と本音
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「イリナ、少し食べた方が良いわ。ガレットだけでも」
私の手前の取り皿に、リディ様が丸い焼き菓子を置いた。
眠りから覚めた太陽が今日も地上に黄金色の光を注ぐ頃、私はリディ様と中庭に出て、食卓テーブルに着いていた。
私達の間には、サンドイッチやスコーン、スモークチキンなどの主食から、コンフィチュールや焼き菓子まで、ところ狭しと盛られたケーキスタンド。淡いピンク色が基調のブーケや白鳥が絵付けされたティーポットから、昨日ラシュレの買ってくれた懐かしいフレーバーの紅茶が香っている。
香ばしいメープル風味のミルクティーをたまに啜っては、私は食事を進めるリディ様を眺めていた。
「イリナ」
「…………」
私は皿に置かれた焼き菓子をつまむ。一口大に割る。それを口に含んだだけで、胃から逆流しそうになる。
ラシュレが出て行って、五時間は経った。
彼女は私を気遣ってか、音も立てずに起き抜けた。しかし私は起きていたので、偶然を装って半身を起こし、身支度する彼女と二言三言を交わしたあと、階下の踊り場まで見送った。
