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戦場のマリオネット

第5章 真実と本音




 …──イリナ、ごめん。



「ヒッ……」


 王妃が血相を変えた。

 それが何かを瞬時に理解出来なかったらしい王の方は、褐色に染まった白い布を数秒凝視したあと、よろめいて、肘を燭台に打ちつけた。

 私が突きつけたのは、イリナの腹から流れたものだ。
 破瓜や診察ではこれだけの出血に至らない。彼女と初めて出かけたあの日、私の腕を伝いしたたっていった鮮血は、彼女の熱を帯びていた。


「イリナの血だ。お前達の憶測の通りだとすれば、私には報復の動機もあるな」

「な、な、なんてこと……あぁ、イリナ……」

「お前達がどれだけの血を流そうと、恨みはあっても同情する謂われはない。リディも同じ目に遭わせたくなけば、従え」


 王に縋って王妃が泣き出す。


 御堂の外がざわついていた。

 振り返ると、階下に残してきた隊員達が御堂に向かってくるのが見えた。

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