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戦場のマリオネット

第5章 真実と本音



「私はチェコラスには来ない。リディ様のものだもの」


 イリナは、それからブリーズやミリアム、メイド達を見回した。


「それに私はこの国では暮らせない。彼女達だって、私を恨んでいるでしょう。私はここで、それだけのことをしてきたわ。素性がどうあれ、私はコスモシザの人間よ」

「その心配はない」


「…………」


「その者を捕らえよ」


 厳かに令したジスランの目が、私を示した。

 父親が娘を見る目ではない、獲物を捉える眼光を湛えて。


 私は飛びかかってきたブリーズの腕をかわして、その図体をねじ伏せる。それでも荒技を仕掛けてきたので、彼の腹を蹴り上げて、前屈みになったところを頚椎から殴って叩き落とした。


「グァっ」


 絨毯に転がり込んだ部下を跨いで、私はイリナに歩み寄る。


「イリナ」


 さっきまでは微笑みもした、彼女から腕を絡めてもきたイリナは、私と目を合わせようとしない。

 私はイリナの肩を寄せて、無理矢理にその目を覗く。

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