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戦場のマリオネット

第5章 真実と本音



「隠しててごめん」

「嘘だったのね、貴女の言葉も、嘘だったなんて……」

「イリナを守るって言ったのは、嘘。君は初めから助かることになっていた」

「…………」


 私がそれを確信したのは、半月ほど前のことだ。

 父とブリーズの密談を、偶然聞いた。

 彼らがイリナを生かしたがっていたのは、当然だった。元よりジスランはこのためにイリナを捕獲したようなものだ。オーキッドの屋敷に預かり、時が来るまで私に時間稼ぎをさせた。
 しかし彼女への国民の怨恨は予想の範疇を超えていた。彼女をチェコラスに戻しても、その身にいつ危険が迫るか分からない。そこで彼らの思い至ったのが、正統なアイビー家の血を引く娘を処することだった。


「コスモシザを陥落させれば、私は捕らわれる。アイビー家の後継者として。このことを知って、イリナを連れて逃げようかと思った。任務なんか放り出して、誰にも知られず、君と一緒に生きていきたい……本当にそう思った」

「…………」

「でもイリナは、ずっと一人で生きてきたんだと思う。リディのために頑張って、何もかも背負って。甘え方を知らないんだって、穏やかな場所が君には必要だって」


 コスモシザが破れれば、イリナは拠り所を失くすかも知れない。立ち直れなくなるかも知れない。

 しかし私達は、本来いるべき場所にいなかった。

 両親の顔も忘れた私と違って、少なくとも今、イリナは彼女の生まれた家にいる。

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