
戦場のマリオネット
第2章 終わりなき責め苦
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屋敷が駐屯地に近いのもあって、昼間ブリーズに早めの休憩を与えた私は、ミリアムにも訓練場へ戻るよう指示した。
「イリナのお役目、私では不足だからですか」
「あの牢が何十年も放置されてきたのは、あれが軍の管轄じゃないからだ。今は謀反も犯罪も、然るべき国家機関が対応している」
本来なら国立収容所辺りに送られるはずのイリアの件に、私はミリアムを関与させるつもりはなかった。昨日はやむなく従わせたにしても、父ジスランが旧友のブリーズを指名した今、彼女が降りても問題はない。
「仰る通り、チェコラスの軍は、領主である公爵様ご一家と国の治安を衛護するための組織です。犯罪者の捕獲や、万が一に備えての訓練をしている程度の軍人達の中には、公的な収容所に置かれた執行人を蔑視している者達さえいます」
「そういうこと。ミリアムは、昨日のイリナを見ていただろう。彼女の堕落はコスモシザの制圧に不可避だが、意図して個人を虐待していることには違いない。殺しはしないにしても、不具が残ることもある」
石台に繋がれたイリナを見て、もとよりミリアムは顔を顰めていた。
イリナの女の象徴が裂けて、下半身が赤く染まっていくのを見据えながら、彼女は何度も目を背けたがっていた。
