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戦場のマリオネット

第2章 終わりなき責め苦



「ご心配畏れ入ります。しかし私は、仕事を選ぶような弱い人間にはなりたくありません」

「君が弱いなんて思ったことない。他の男達だって、誰一人やりたがらなかったじゃないか」

「それがチャンスだと、立候補したんです」

「クロヴィスが心配していた。ミリアムを気に入っている彼は、今のままでは訓練にも身が入らない」

「友人を心配して腑抜けになる軍人など、恥ずかしいだけです」


 ミリアムの肩にかかった錦糸のようなブロンドが、昼間の陽光を弾いていた。神妙な面持ちを明るめる翠の双眸が、野性を帯びて、私を捉える。

 私の部隊に配属されてまもなく、彼女に聞かされたことがある。
 婚姻か従軍を強いられる貴族の女は、後者の場合、身籠ることが難しいと判断されたケースが多い。検査で調べられることもあれば、ミリアムのように堕胎もある。
 初潮を迎えたばかりの頃に、貴族の男にちょっかいをかけられたことを嘆いていても、仕方ない。ただし屈辱は癒えない。だから大義を成し遂げて、彼らより上に立つのだと、彼女は決意を固くしていた。

 ミリアムがクラヴィスという青年の好意を無碍にするのは、チェコラスが長い歳月を費やして築いてきた偏見が、その心を閉ざさせているからだろう。

 幼い頃より家柄の良い男との見合いを過剰に恐れてきたアレットが、不意に私の脳裏をよぎった。

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