
戦場のマリオネット
第3章 懐柔という支配
オーキッド家には、二人の子供が求められていた。
いずれ戦士となって奪う者と、妻となって手懐ける者。
チェコラス公爵の要求に、母が見事に応えた結実が、私達姉妹だった。
幼少期より、私が軍人として教育を受けてきた一方で、アレットも政治的駆け引きの道具として仕込まれていった。
活発で明朗な少女だったアレットが、酷く思い悩んだ顔を俯けるようになったのは、彼女が十五歳になる少し前からだ。
彼女に落ちた暗い影の正体を私が知ることとなったのは、彼女がメイド達の目にも触れない部屋へ、私を引っ張っていったある日のことだ。
「お姉様。私は……、美しいかしら」
思い詰めたアレットの顔が病人のようだったのは、今でも鮮やかに思い起こせる。
「女として、魅力的に見えるかしら」
十代半ばの少女として、いや、女として申し分ないほど、当時からアレットは熟れていた。令嬢らしい身のこなしや嗜みは言うまでもなく、肉体はもぎたての果実のように柔和でみずみずしいハリに満ちて、芸術品と言って良い。
私がそのままの所感を述べると、青い顔がいっそう覇気を失った。
女になどなりたくなかった、せめて醜く生まれていたら、男に身体を委ねなくて済んだだろうか──…そう言って、アレットはその場に崩れ落ちた。
