
戦場のマリオネット
第4章 愛慾と宿怨の夜会
「イリナ……」
「あぁ……」
我ながらよだれを垂らした獣同然だ。
味などしないはずなのに、指を絡めて唇を開かれて、口内をなすがままに撫でられていると、私はあっという間に潤う。
じゅる……ちゅる……ずず…………
唇の端をこぼれかけた水分まで吸い上げていったラシュレが私の胸に触れた時、私はその手を押さえつけた。
「ダメ」
「え……」
「夫人がお呼びなんでしょう。もう行かないと」
「そうだけど」
そう。ラシュレは、私を呼びに来ただけだ。
それなのに何故、私は今まで、彼女と長いキスをしていたの。
オーキッド夫人がメイドを使いに寄越さなかったことに関しては、娘がここまで淫奔とは思っていないからだろう。
扉を開けたラシュレが手を差し出してきた。
「何」
「捕まって」
「もう平気」
私は長い階段に足を踏み出す。
夫人が手当てしてくれるようになったのもあって、私の身体は回復していた。
ただ気になるのは、この階段を昇りきるだけで、脚が異様に軋むこと。筋力は十分に持ち合わせていた私は、ここに来てろくに動かなくなったせいで、体力は相当落ちていた。
